酒瓶さかがめ)” の例文
と、朶思大王も孟獲も、有頂天によろこんで、いよいよ大量に酒瓶さかがめを開き、肉をばんに盛り、血を杯にそそいで夜に入るまで歓呼していた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一〇四座上とこのべ酒瓶さかがめ一〇五りたるさらどもあまた列べたるが中に臥倒ふしたふれたるを、いそがはしく扶起たすけおこして、いかにととへども、只一〇六声をみて泣く泣くさらにことばなし。
その船には二つの紅い食器と、五つ六つの酒瓶さかがめを乗せているはずだから、それに乗り込んで行くとしよう。そのうちはここの親類で、なかなか金持らしいから、あすこへ転げ込めば間違いなしだ
是で酒瓶さかがめから直接に濁醪どぶろくなり稗酒ひえざけなりをんで、寒かったろうに一ぱい引掛けて行くがよいと、特別に骨を折った者をいたわっていたのである。勿論もちろん対等の客人にはこのような失礼なことはできない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
白い山羊やぎの背に、二箇の酒瓶さかがめを乗せて、それをひいてきた旅の老人が、桑の下に立って、独りで何やら感嘆していた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虎の血だらけな衣服もかえられ、席を曹家の客楼に移して、灯を新たに、宵からまた飲みだしたのだから、もう幾箇の酒瓶さかがめからにしたやらわからない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういって、彼は、封印しておいた酒蔵から、大きな酒瓶さかがめを一箇、士卒に担わせて来て、大勢の真ん中へ置いた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ま、そう仰っしゃらないで。せっかく、町の衆に代って、およろこびのため、あれに朝から冷やしておいた酒瓶さかがめを、もう口まで切って、お待ち申しておりましたので」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雉子きじももや、小鳥のくしやきを売っている老婆のそばで、べつな男は、大きな酒瓶さかがめを、道ばたにすえ、自分も飲んで、酔って、歌いながら、実は目的の、酒売りをやっている。
と、彼方から、に二箇の酒瓶さかがめを結びつけてくる者があった。近づき合うにつれて、ぷーんと芳熟した果実のよい匂いが感じられた。腕には、果物の籠も掛けているのだった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱富はわざと罵声ばせいを投げた。それを聞くと、兵どもはゲラゲラ笑って、口々の呶罵どばさかなにまた飲んだ。李雲が、列へもどれ、と命じてもなかなか酒瓶さかがめまわりを離れようとはしない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、一人はたちまちどこかへ走って行き、やがて素焼の酒瓶さかがめをかかえて来て
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、まず一人では持てないような酒瓶さかがめが祭壇のむしろへ運ばれてきた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十荷じっか酒瓶さかがめを用意し、干魚、乾貝ほしがい、川魚、鳥肉、果実、牛酪ぎゅうらく、菜根など、あらゆる珍味を調理して、当日の盛餐せいさんにそなえた。——おそらく、この館の古い厨房が始まって以来の煮炊きであったろう。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ははははは。酒瓶さかがめではあるまいし……」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)