那須なす)” の例文
「そう。……那須なすってやつがいまやってくるから、そいつにきくと、もうすこしくわしいことがわかるだろう。……さあ、ここだ」
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
諸君の中には近頃一読せられた人もあろうと思うが、清水文弥翁の『郷土史話』には、野州やしゅう那須なすの農村における実験がしるしてある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
老人、あの当時、……されば後月あとつき、九月の上旬。上野辺のある舞台において、初番に間狂言あいきょうげん那須なすかたり。本役には釣狐つりぎつねのシテ、白蔵主はくぞうすを致しまするはず
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅人 初めは東北地方へ出かけて、那須なすの方へ行きました。それから福島の飯坂いいざかへ行って、会津あいづへ行って……。それから越後へ出て、北国ほっこくの方をまわって……。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「二十五日。雨。太田原ノ駅ニ飯シ鍋懸ニ憩ヒ越堀駅ニ宿ス。コノ際平岡漫嶺断続シテ相連リ原野ソノ間ヲ補綴ほていス。弥〻いよいよ望ムニ黄茅白葦こうぼうはくいナルハイハユル那須なすノ原ナリ。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ために、太古からの自然も、ようやく、あちこち、きずだらけになり、まぬがれぬ脱皮を、苦悶するように、この大平原を遠くめぐる、富士も浅間も那須なすたけも、硫黄色の煙を常に噴いていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから月折峠つきおれとうげに一戦し、那須なす雲巌寺うんがんじに宿泊して、上州路に向かった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吉田さんの『地名辞書』の索引などを見ると、巨勢こせとか能勢のせとか須磨すまとか那須なすとかいう類の二音の意味不明な地名が幾種もある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
坂東平野は、赤城颪あかぎおろしや、那須なすの雪風に、冬がけめぐる朝夕となった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方カラハシという名称の行われていた区域も弘いようである。群馬県の佐野、栃木県の那須なす、福島県の伊達だてなどの実例を私は知っている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ここは、「那須なす与市よいち西海硯さいかいすずり」の奥庭の書割かきわりにでもありそうなさびしさ。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北海道に行くと何々農場という地名ができている。那須なす郡などの大字の地名に何々開墾というのがある。これらは最も新しい固有名詞である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
関東の方でも那須なす矢又やまた村の鷲子とりのこ神社に、二羽烏というのが山中七不思議の一つに数えられているそうだが(『下野神社沿革史』巻八)、これも恐らくお社の祭なり
自分の調査では下野しもつけ那須なす郡の伊川村などに、サジッポの例が飛んで存在する。