-
トップ
>
-
這個
>
-
この
と
言はうとして、ふと
己を
顧みて
呆れ
返つた。
這個髯斑に
眼円にして
面赤き
辺塞の
驍将に
対して、
爾き
言を
出さむには、
当時流行の
剣劇の
朱鞘で
不可、
講談ものゝ
鉄扇でも
不可い。
かけにして
番を
口説いた
一升入の
貧乏徳利を
誰かが
外套(
註。おなじく
月賦……
這個まつくろなのを
一着して、のそ/\と
歩行く
奴を、
先生が
嘲つて——
月府玄蝉。)の
下へ
忍ばした
勢だから