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追懸
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おひかけ
付られたるを
殘念に思ひ切て
捨んと
逃出す久兵衞を
追懸し
折火附盜賊改め役小出兵庫樣の御組下笠原粂之進とか云ふ人に
召捕れ
入牢となりしを文右衞門の女房が大岡樣へ
御直訴訟を
「早くよう。ヰクトルやあ。両方の耳に、
追懸のやうに附けるのだよ。」
勾引何れへか引込みしが跡より
追懸尋ぬれ共一方
行方知ず
所々方々尋ね居れりと
物語りけるに傳吉聞て偖て
憎き
奴の仕業かな偖々御困りならん何れにか御
商議申上げん程に私し方へお出あれ
然共只今は
追懸し處に
折惡敷御加役方笠原粂之進殿に
出會直ちに召捕れ候に付
夫は右の段々一々
辯解仕つり候へ共御聞入なく入牢と相成
誠に
歎かはしく存じ奉つり候因て右申上候
紙屑屋新藤市之丞の
在家さへ相知候へば金子の
出所も分り文右衞門が百兩の盜賊に
之なき事も明白に相分り候間何卒御慈悲を