)” の例文
その上、伊吹の昔ばなしだの、不知哉丸のことなどを、問い出されると、女ごころは、つい、恨みを、ぐらかされもする。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしもう主力をぐれた孤軍である。ついには随所で殲滅され、やがて夜の曠野には、その雄たけびもなくなっていた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高氏の言で、今、問注所のそうした空気も、ふと妙に、ぐらかされたのを見ると、主席の執事貞顕は、すぐその弛緩しかんをひき緊めるべき職責に駆られていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、高氏だけは、そんなせつなも、笑い遅れて、うつろなぐれ笑いを、あとから、頬へかすめていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、一行にぐれて父皇後醍醐をさがしあるいておられた宗良親王と、もうひとりの公卿とを捕えた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼくは奇妙な気もちに行きぐれて帰った。ショックというほど強い嫉妬でもなかったし、少女とアブ公の戯れも、大人の行為のそれとは違うものであったろう。
しかしまた、宮の扈従こじゅうでいながら宮にぐれて、散り散り舟にも乗りおくれたりした公卿もある。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だのに、母にぐれた不知哉丸は、その夕、検非違使けびいしから小松谷の仲時の邸にとどけられていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道誉の助け舟で、茂時もほっとし、近習ばらも、わざと話題をほかへ、ぐらした。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ええもう、乳母にはぐれるし、夜にはかかるし、長官もきっとご心配し抜いているにちがいない。……そうだ、こんなブラブラ歩きなどしていられるものか。雷横、おれは先へ行くぞ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たすけ合いつつ、初めのうちは天皇のおあとにつづく者十数名はかぞえられたが、谷へすべり落ちたまま声なき者、道にぐれて答えの消えた者、それに敵兵らしい気配にも折々脅かされて
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「上へ逃げる敵は見のがせ。やがて下へ下へと、敵を追い降ろして行こうぞ。……あれ見よ、兄者あにじゃの一勢が、はるか彼方の街道から蓮池のあたりに見える。……兄者の軍にぐれまいぞ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直義は、ぐらかされた思いである。睨みつける意識で、ぐっと睨みすえた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平治に敗れた源ノ義朝は、都に愛人の常磐を残し、義平、朝長、頼朝などの子弟一族をつれて都を落ち、雪の近江路をさまよう間に、ひとり十三歳の頼朝は、馬眠りして、父や一族にぐれ去る。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はす咲く池は子を呑んで、金枝きんしの門にお傅役もりやくぐれ込むこと
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦ふたりこそだ。ぐれるなよ、卯木」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一人の男にぐらされるたび、いちいち狂乱していたら、女の一生は狂気のしどおしで送らにゃならぬ。こんな世にばかげていよう。しょせん女性にょしょうにしても強く生き抜くしか生きようはおざるまいがの。ま、ご短慮はなさらぬことだ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ハハハ、おぐらしを」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)