近来ちかごろ)” の例文
旧字:近來
伊丹屋の主人伊右衛門が或日女房にこう云った「おきん近来ちかごろ変わってきたね。なんだかおちつかなくなったじゃないか」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
近来ちかごろの事なりき、我がすむ塩沢しほざはより十町あまり西南にあたりて田中村といふあり、此村に右の寒行かんぎやうをするものありけり。
綸、天蚕糸てぐすなど異りたること無し。鉤もまた昔ながらの狐形と袖形となり。たゞ鉛錘おもり近来ちかごろの考に成りたる由にて、「にっける」の薄板をせたれば光り輝きて美し。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
いいえ、私も近来ちかごろは駄目なんだが、今夜はあまりうれしいから進んでひと口いただきますよ。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
近来ちかごろ都の大臣殿おほいどの一六一御願ごぐわんの事みたしめ給ひて、一六二権現ごんげんにおほくの宝を奉り給ふ。さるに此の神宝かんだからども、一六三御宝蔵みたからぐらの中にてとみせしとて、一六四大宮司だいぐじより国のかみうつたへ出で給ふ。
前途さきは直ぐに阿部の安東村になる——近来ちかごろ評判のAB横町へ入ると、前庭に古びた黒塀をめぐらした、平屋の行詰った、それでも一軒立ちの門構もんがまえ、低く傾いたのに、独語教授、と看板だけ新しい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「有野村へ?……外は近来ちかごろの大雪であるらしいのに」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
抜けるような綺麗な頸足えりあしをして、ひやつくような素足をして、臆面もなく客へ見せて、「おや、近来ちかごろ見限みかぎりね」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おや。二個ふたつもらッたのか。だから近来ちかごろはどこでも切符を出すのだ。」
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近来ちかごろ普請に取りかかったやしきだ」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)