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ためら
ふりがな文庫
“
躊
(
ためら
)” の例文
まあ帰ってからゆっくりと思って、今日見つけた家の少し混み入った条件を行一が話し
躊
(
ためら
)
っていると、姑はおっ
被
(
かぶ
)
せるように
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
戸を開けて恐る恐る外を見て私は
躊
(
ためら
)
った。ヒューヒュー風が吹いていて外は
真
(
ま
)
っ
闇
(
くら
)
だった。遠くの方からかちかちと火の番の
拍子木
(
ひょうしぎ
)
の音が聞える。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
隼は
躊
(
ためら
)
うように、じっと同じ高さのところを飛んでいる。恐らく、彼は鐘楼の
雄鶏
(
おんどり
)
を
狙
(
ねら
)
っているだけなのかも知れない。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
そして、千種が、一つ時
躊
(
ためら
)
つた後、急いで、自分のハンカチで神谷の口を拭いてやらうとした時、鬼頭は
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
遣るまいとする、早くお取んなさいと婢が手を伸べて差附けるに、貞之進はどちらともなく
躊
(
ためら
)
って居ると、婢は小歌を辛く防いであなたと云って投て寄越した。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
▼ もっと見る
すると、その木戸の外に、色街の者と思われる少女が一人、なにやら
躊
(
ためら
)
いぎみに往ったり来たりしていた。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
人々はそれを棄てることに
躊
(
ためら
)
いを感じない。「もったいない」と云う声は、まもなく消えるであろう。事情をかくまでに不幸にさせたのは、誰の罪によるのであろうか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
真紀 女はあなた、(気を換えて)
莫迦
(
ばか
)
なことを
訊
(
き
)
くものじゃない。何時だってそれよ、あなたは。(間、一寸
躊
(
ためら
)
った後)あなた、此の間、よし子さんのところへお
招
(
よ
)
ばれして行ったね、お祭とかで。
みごとな女
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
刑事が
躊
(
ためら
)
っているところへ、折よく、
密行
(
みっこう
)
の警官が通りかかった。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
法水は、
躊
(
ためら
)
わず云いつづけた。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
いささか気おくれがして、私はしばらく、その前に立って
躊
(
ためら
)
っていた。が、いつまでもこうしてはいられぬので、思い切ってドアを開いて中に
這入
(
はい
)
って行った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
しかし
躊
(
ためら
)
うようすはなかった。ひと足ずつ静かに、
爪尖
(
つまさき
)
で底をさぐりながら、葦の間を進んでいった。
葦は見ていた
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
てるは、その通りに書く、時々、顔をあげて、
躊
(
ためら
)
ふ風をするが、数子は、それを頤で
急
(
せ
)
き立てる。
秘密の代償
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
止めてはこちらが立たずと又一行とう/\切手を二枚要する長文句が出来上り、自分で持って出て郵便函へ入れようとしてなお
躊
(
ためら
)
い、向うから来た巡査に
怪
(
あやし
)
まれるのを恐れて思切って投込んだが
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
刑事は私の
処置
(
しょち
)
をどうしたものかと
躊
(
ためら
)
った。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ええ、しましたとも。ですけど、それについての疑念なら、かえって私の方にあるくらいですわ。私には、あの方が何故お怒りになったのか、てんで見当がつかないんですの。実は、こうなのでございます」と伸子は
躊
(
ためら
)
わず言下に答えて
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
江戸を去ってはもうその折もあるまいと思われ、かなり
躊
(
ためら
)
う心を押してお訪ねしたのである。大人はそのとき小石川の目白台という
処
(
ところ
)
に閑居をたのしんでいらしった。
日本婦道記:桃の井戸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女は
躊
(
ためら
)
つた。彼はもう一度「さあ、そんなことを遠慮しちやいけません」と云つた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「だけど、この子があるんでねえ、面倒臭くて……」と操さんはまだ
躊
(
ためら
)
っていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
孝之助がちょっと
躊
(
ためら
)
うのをみて、八束はこう云いながら、手で押しやるような、身振りをした。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
千種はいつとき
躊
(
ためら
)
つて、たうとう神谷のキャビンへはひつた。ベッドの端へ腰をおろして、彼のすることをみてゐた。安全剃刀のどこかが工合が悪くなつたのをなほしてゐるのである。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
彼女は
躊
(
ためら
)
いもせずに寝間の襖をあけた。良人はそこにもいなかった。それで千世はさらにのぼせあがり、すぐに居間へ引返した。すると廊下から入って来る良人と顔を見合せた。
四日のあやめ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
わらぢの紐を結ひ直し、やや
躊
(
ためら
)
ふ風で門をはいり、読経をはじめる。
虹色の幻想(シナリオ)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
ゆき子は
些
(
ちょっ
)
と
躊
(
ためら
)
っていたが、思いきったように廊下を奥の方へ進んで行った。——と、右側に並んでいる小部屋(役者の化粧室)のひとつから、急に
扉
(
ドア
)
をあけて現われた男がある。
劇団「笑う妖魔」
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
玄関口で、彼は、ちよつと
躊
(
ためら
)
つた形で
花問答
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
およそ三十間ばかり先に、
焚火
(
たきび
)
の火らしいものが小さく見えた。そのちらちらする火が彼の眼をとらえたのであろう、彼はちょっと
躊
(
ためら
)
っていたが、すぐにそちらへ向って歩きだした。
橋の下
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
躊
(
ためら
)
うように云った
しじみ河岸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
躊
漢検1級
部首:⾜
21画
“躊”を含む語句
躊躇
御躊躇
躇躊
躊躇逡巡