あから)” の例文
眼を空にして、割烹衣かっぽういの端で口をぬぐっているときお千代は少し顔をあからめた。お絹は姉の肩越しに、アンディーヴの鉢を覗き込んだが
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かく言ひつつ彼は艶々つやつやあからみたる鉢割はちわれの広き額の陰に小く点せる金壺眼かねつぼまなこ心快こころよげにみひらきて、妻が例の如く外套がいとうぬがするままに立てり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
由子は、流石に、一寸顔をあからめて、横を向いた。その赤らんだ耳朶みみたぶにかかった二三本の遅れがかすかにふるえていた。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
それはおもてを伏せ顔をあからめても、到底追付かないほどのはずかしい無知である。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
主任は六ヶ敷そうに顔をあからめた。
三狂人 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
姉娘のお千代の方が顔をあからめたり戸惑う様子を見せた。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)