貴妃きひ)” の例文
事成れば、そなたを貴妃きひとし、事成らぬ時は、富貴の家の妻として、生涯を長く楽しもう。……嫌か、ウム、嫌ではあるまい
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信實まこととなし貴妃きひ小町にも勝るとも劣はせじと思ふ程なる美人であれば其樣な病ももとより有るまじと思ふが故に近所きんじよ隣家となりの人にも更に平常の行跡ぎやうせきさへも聞事なくえん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ハ、ハッ、昔の褒姒ほうじ飛燕ひえん貴妃きひなどいう絶世の美人は、悉くそうして選び出されました」
帝これを嘉賞かしょうし、故翰林かんりん学士、ほうれんの遺子黛女たいじょを賜う。黛は即ちふんの姉にして互いに双生児ふたごたり。相並んで貴妃きひの侍女となる。時人じじんこれを呼んで花清宮裡かせいきゅうり双蛺そうきょうと称す。時に天宝十四年三月。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「いつか、そなたに云ったことがあろう。わしが帝位に昇ったら、そなたを貴妃きひとして、この世の栄華を尽させんと。とうとうその日が来た」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
脂粉や珠玉も泥土にまみらせて惜しむ眼もなかったという——長恨歌ちょうごんかのうちにもある漢王の貴妃きひとの長安の都を落ちるさまにも似て、道はすこしもはかどらなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青州奉行は、その貴妃きひの兄にあたる人なので、姓にも二字の慕蓉ぼよう、名も二字名で、彦達げんたつといい、妹の威光を逆に兄がかさに着て、いやもうえらい羽振りなのだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)