つゝ)” の例文
一と晩の夜露にさらされて、らふ人形のやうに蒼白く引締つて見えるのは、言ひやうもない痛々しさで、さすがに無駄口の多い八五郎も、つゝしみつゝしんで何や彼と世話をしてをります。
三四郎は肉汁そつぷひながら、丸で兵児へこ帯の結目むすびめの様だと考へた。其うち談話が段々はじまつた。与次郎は麦酒ビールむ。何時いつもの様にくちを利かない。流石さすがの男も今日けふは少々つゝしんでゐると見える。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さアどうも入牢じゆらうおほけられて見ると、仕方しかたがないからつゝしんで牢舎らうしや住居すまゐをいたしてりますと、わうもお考へになつて、アヽ気の毒な事をいたした、さしたる罪はない、一いかりにまかして
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
其處には世にもつゝしみ深い女房が、もやらず平次の歸りを待つて居るのです。
今度は三四郎も笑ふ気がおこらなかつた。レオナルド、ダ、ヸンチと云ふ名を聞いて少しく辟易へきえきした上に、何だか昨夕ゆふべの女の事を考へ出して、妙に不愉快になつたから、つゝしんでだまつて仕舞つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)