講筵こうえん)” の例文
隣人愛の教説者として有名な無腸公子むちょうこうし講筵こうえんに列したときは、説教半ばにしてこの聖僧が突然えに駆られて
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
小野村の倉沢義髄よしゆきを初めて平田鉄胤の講筵こうえんに導いて、北伊那に国学の種をまく機縁をつくったほどの古株だ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は学生として先生の講筵こうえんに出席している間に『精神病学集要』・『精神病学要略』・『精神病鑑定例』・『精神病検診録』・『精神病診察法』等の書物を知り
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ことに宛転えんてんたる嬌音きょうおんをもって、乾燥なる講筵こうえんに一点の艶味えんみを添えられたのは実に望外の幸福であります。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伊兵衛は素直に受けて会釈した……そしてふと、初めて津田邸の講筵こうえんに出たとき
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
おさなき心に思い計りしがごとく、政治家になるべき特科のあるびょうもあらず、これかかれかと心迷いながらも、二、三の法家の講筵こうえんつらなることにおもい定めて、謝金を収め、きて聴きつ。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ブラックストーン(Blackstone)が英国空前の大法律家と称せられてその名声嘖々さくさくたりし当時の事であるが、その講筵こうえんをオックスフォールド大学に開いた時、聴講の学生は千をもって数え
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
心理学の講筵こうえんでもないのにむずかしい事を申上げるのもいかがと存じますが、必要の個所だけをごく簡易に述べて再び本題に戻るつもりでありますから、しばらく御辛抱ごしんぼうを願います。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
信州北伊那郡小野村の倉沢義髄くらさわよしゆきを平田鉄胤かねたね講筵こうえんに導いたのも、この正香である。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
専六もまた藤田ひそむ柏原櫟蔵かしわばられきぞうらと共に山澄の門にって、洋算簿記を学ぶこととなり、いつとなく元秀の講筵こうえんには臨まなくなった。のち山澄は海軍大尉を以て終り、柏原は海軍少将を以て終った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ただ一つにしたる講筵こうえんだに往きて聴くことはまれなりき。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)