諧音かいおん)” の例文
自分の生きかたが、無意味だと解った時の味気なさは下手な楽譜のように、ふぞろいな濁った諧音かいおんで、いつまでも耳の底に鳴っているのだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
その五十鈴川の水は、大湊おおみなとの口へながれ入っているが、武蔵を乗せてゆく渡舟の櫓音ろおとは、ただ無心な諧音かいおんの波を漕いで行く。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつてこれほど、宇宙の朗らかな諧音かいおんは内心の愛の調べによく調子を合わしてることはなかった。かつてこれほど、マリユスは心を奪われ幸福で恍惚こうこつたることはなかった。
おり蹴破けやぶり、桎梏しっこくをかなぐりすてた女性は、当然あるたかぶりを胸にいだく、それゆえ、古い意味の(調和)古い意味の(諧音かいおん)それらの一切は考えなくともよしとし、(不調和)のうちに調和を示し
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「ああそうだ。あの音だ。ピタゴラス天球運動てんきゅううんどう諧音かいおんです」
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
諧音かいおん
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そよ吹く南風をはらんで、諧音かいおんの海を、ひそやかにひがしして行ったこの一ぱんこそ、やがて山陽の形勢を一変し、ひいては後の全日本に大きな潮のあとをのこし
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水車すいしゃは、もすがらふだんの諧音かいおんをたてて、いつか、孟宗藪もうそうやぶの葉もれに、さえた紺色こんいろがあけていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷々ひえびえと樹海の空をめぐっている山嵐さんらんの声と一節切ひとよぎり諧音かいおんは、はからずも神往しんおうな調和を作って、ほとんど、自然心と人霊とを、ピッタリ結びつけてしまったかのごとく澄みきっていた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)