観音堂かんのんどう)” の例文
かくては今日東京市中の寺院にして輪奐りんかんの美人目じんもくを眩惑せしむるものは僅に浅草の観音堂かんのんどう音羽護国寺おとわごこくじ山門さんもんその二、三に過ぎない。
彼の愛する風景は大きい丹塗にぬりの観音堂かんのんどうの前に無数のはとの飛ぶ浅草あさくさである。あるいはまた高い時計台の下に鉄道馬車の通る銀座である。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
観音堂かんのんどうの屋根はころびかかり、檜木ひのき六本、すぎ六本、都合十二本の大木が墓地への通路で根扱ねこぎになったと言って見せるものがある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
花屋敷をまわって、観音堂かんのんどうに出て、とびらの閉ってしまった堂へ上って拝んでみた。私の横にはゲートルをはいた請負師うけおいし風の男が少時おがんでいた。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
と、その向こうには、神さびた弁天堂べんてんどうの建物が見えた。なお、あたりには、宇賀うが御社みやしろ観音堂かんのんどう多聞堂たもんどう月天堂げってんどうなどの屋根が樹の葉のなかにいている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
観音堂かんのんどうのうらにあたる空地あきちに、本堂そこのけの背の高い大きな小屋がけをし、サーカスそっくりのけばけばしいどんちょうやら大看板おおかんばん、それに昔のジンタを拡大したような吹奏楽団すいそうがくだん
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
横から見た観音堂かんのんどう。少年はその下を歩いてく。観音堂の上には三日月みかづきが一つ。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
観音堂かんのんどうへ念仏に見える町内のばばたちのためには茶や菓子を出し、稲荷大明神いなりだいみょうじんを祭りたいという若い衆のためには寺の地所を貸し与え、檀家だんかの重立ったところへは礼ごころまでの般若札はんにゃふだ納豆なっとう
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
巴里パリーにノオトル・ダアムがある。浅草あさくさ観音堂かんのんどうがある。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
観音堂かんのんどううら
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)