なが)” の例文
が、なんとなく、ひとよりも、そらくもが、いろ/\のかげつて、はなながめさうな、しづんださびしいおもむきつたのは、奧州あうしう天地てんちであらう。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と思うと、袖を斜めに、ちょっと隠れたさまに、一帆の方へ蛇目傘ながらほっそりしたせなを見せて、そこの絵草紙屋の店をながめた。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後へ立淀んで、こなたをながめた書生が、お妙のその笑顔を見ると、崩れるほどにニヤリとしたが、例の羽織の紐を輪なりって、格子を叩きながら、のそりと入った。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
フト立留まって、この茅家あばらやながめた夫人が、何と思ったか、主税と入違いに小戻りして、洋傘ひがさを袖の下へよこたえると、惜げもなく、髪で、くだんの暖簾を分けて、隣の紺屋の店前みせさきへ顔を入れた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)