見貫みぬ)” の例文
喧嘩がしたくて来たものは、卓子テーブルつかまつてお辞儀をするものだと知つてゐる馬左也氏は、直ぐ老教師の用事を見貫みぬいて苦い顔をした。
……彼奴は吾輩が昨夜からここに居据いずわりで居る事を、今朝けさ本館の玄関を這入ると同時に見貫みぬいていたに違いない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
表は女性にたいしては無雑作であるようでいつも深い計画の底まで見貫みぬく力をもっていることは実際であった。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
女といふものはよく目端の利くもので、平素ふだんから良人をつとの腕前はちやんと見貫みぬいてゐるから、その力量ちから一つでとて背負しよひ切れないと見ると、直ぐ神様のとこへ駈けつける。
その音吐おんと朗々として、言葉癖、尋常ならず。一眼にて吾が素性を見貫みぬきたるものの如くなり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しのぶずりの狩衣かりぎぬ指貫さしぬきはかまをうがち、烏帽子えぼしのさきを梅の枝にすれすれにさわらし、遠慮深げな気味ではあったが、しかし眼光は鋭く、お互に何のおもいをとどけに来ているかを既に見貫みぬいている
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
コンナ屁ッポコ新聞社にかがまっているヨボヨボの編輯長が、吾輩のモノスゴイ、スバラシイ性格や技能をタッタ一眼で見貫みぬき得る筈は絶対に無い訳なのに、何一つ尋ねるでもなければ
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「感心しましたねえ。第一タッタそれだけの間に、犯罪の真相を見貫みぬいてしまったのでしょうか。そんな事を云う位なら警察なんか当てにしなくともいいだけの自分一個の見解を……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
落ち付いて……とにかくここへ今一度おかけ下さい。あっしのお話をお聞き下さい。御事情はあっし見貫みぬいております。事件の真相はあっしがチャンと存じておりますから、残らずお話し致しましょう。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
およそ天下が広いというても。人の脳髄ホントに調べて。腹の立つほど簡単明瞭。奇妙キテレツ珍妙無類な。脳の作用を見貫みぬいた者なら。問わず語りで烏滸おこがましいが。ここに居りますわたくしばっかり。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)