襷懸たすきが)” の例文
かや軒端のきばに鳥の声、というわびしいのであるが、お雪が、朝、晩、花売に市へ行く、出際と、帰ってからと、二度ずつ襷懸たすきがけで拭込ふきこむので、朽目くちめほこりたまらず
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
秋谷明神と云う、その森の中の石段の下を通って、日向ひなたの麦ばたけ差懸さしかかると、この辺には余り見懸けぬ、十八九の色白な娘が一人、めりんす友染ゆうぜん襷懸たすきがけ、手拭てぬぐいかぶって畑に出ている。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、勿体もったいないわねえ、私達に何のお前さん……」といいかけて、つくづくみまもりながら、お品はずッと立って、与吉に向い合い、その襷懸たすきがけの綺麗きれいな腕を、両方大袈裟おおげさに振って見せた。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、勿體もつたいないわねえ、私達わたしたちなんのおまへさん……」といひかけて、つく/″\みまもりながら、おしなはづツとつて、與吉よきちむかひ、襷懸たすきがけの綺麗きれいかひなを、兩方りやうはう大袈裟おほげさつてせた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)