菜葉なっぱ)” の例文
ブル・オヤジはウルフを睨み付けたまま、右手をあげて合図をすると、自動車の中から、菜葉なっぱ服に鳥打帽の、肩幅の広い運転手が降りて来た。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
八王子には千人同心が、少くとも二小隊は集る。菜葉なっぱ服が二大隊、これも御味方しよう。甲府城には、加藤駿河するがの手で、三千人、それに、旗本を
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
老教授の一時のこう奮は、しかし「判事!」と叫んだ一語のために、すっかり消えてしまったものと見えて、またもや、菜葉なっぱのようにしおれてしまった。
予審調書 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
夕方裏の畑へ出て、明朝あしたのおつゆの実にする菜葉なっぱをつみこんで入って来ると、今し方帰ったばかりの作が、台所の次の間で、晩飯の膳に向おうとしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
物を食うにもさけでもどじょうでもよい、沢庵たくあんでも菜葉なっぱでもよく、また味噌汁みそしるの実にしてもいもでも大根でもよい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そして常に大精進でしたから、或る時友人と全生庵に坐禅をしに行った帰りに、いけはた仲町の蛤鍋はまぐりなべ這入はいったが、自分は精進だから菜葉なっぱだけで喰べた事がありました。
我が宗教観 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
長野は、赤い組長マークのついた菜葉なっぱ服の上被うわぎを、そばの朝顔のからんだ垣にひっかけて、靴ばきのままだが、この家の主人である深水は、あたらしいゆあがりをきて、あぐらをかいている。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
ながれ案山子かかしは、……ざぶりと、手をめた。が、少しは気取りでもする事か、棒杭ぼうぐいひっかゝつた菜葉なっぱの如く、たくしあげたすその上へ、据腰すえごしざるを構へて、頬被ほおかぶりのおもてを向けた。目鼻立めはなだちは美しい。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
日本語で歌わせられたの……そうして三分ばかりして歌が済んじゃったら監督みたいな汚ない菜葉なっぱ服の人が穴のいたシャッポを脱いでモウ結構です。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
神奈川菜葉なっぱ隊が後からきて、それを撃つのであった。それから、いろいろの種類の鉄砲が、四十挺。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
秋日のカンカン照っているテニス・コートの上で、菜葉なっぱ服の職工連が、コスモスの花を背景にして、向い合ったり、組み合ったりして色々なシグサをるのはナカナカの奇観であった。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)