荷足船にたりぶね)” の例文
と三百円の金を請取うけとり、前に春見から返して貰った百円の金もあるので、又作は急に大尽だいじんに成りましたから、心勇んで其の死骸をかつぎ出し、荷足船にたりぶねに載せ
きょうは朝から日本晴れという日和ひよりであったので、品川の海には潮干狩の伝馬てんま荷足船にたりぶねがおびただしく漕ぎ出した。なかには屋根船で乗り込んでくるのもあった。
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そうして夜になると、五艘ばかりの荷足船にたりぶねで、水門からなにか邸内へ運び込むのです、夜の十時過ぎから、夜明け前三時ごろまで、休みなしに運び込んでいました」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「へえい。なにしろ、高手小手にくくされたまま、おっぽり込まれたんで、危うくおぼれようとしたところを、うまいこと荷足船にたりぶねが通り合わせて、拾いあげてくれたんですよ」
本所ほんじよ竪川たてかは深川ふかがは小名木川辺をなぎかはへん川筋かはすぢには荷足船にたりぶねで人を渡す小さな渡場わたしば幾個所いくかしよもある。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
二三町も行くと、道は隅田川のさびしいどてに出た。対岸の家々の燈火が、丁度芝居の書割かきわりの様に眺められた。真暗な広い河面かわもには、荷足船にたりぶねの薄赤い提灯ちょうちんが、二三つ、動くともなく動いていた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ゆうべどこで泊まった?」「ペスキイの荷足船にたりぶねの上さ」と申しやす。
秋の深くなるのを早く悲しむ川岸の柳は、毛のぬけた女のように薄い髪を振りみだして雨に泣いていた。荷足船にたりぶねの影さえ見えない大川の水はうす暗く流れていた。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
舁夫はもんどりを打ってドブりと仙台河岸へ落ると、そばに一艘の荷足船にたりぶねつないで居りまして、此の中に居たものは伊皿子台町いさらごだいまち侠客おとこだて荷足にたり仙太せんたという人で、力は五人力有って
本所ほんじょ竪川たてかわ深川ふかがわ小名木川辺おなぎがわへんの川筋には荷足船にたりぶねで人を渡す小さな渡場が幾個所もある。
それについ種々いろ/\話があるが、の時死骸を荷足船にたりぶね積出つみだし、深川の扇橋から猿田船やえんだぶねへ移し、上乗うわのりをして古河の船渡ふなとあがり、人力車へ乗せて佐野まで往って仕事を仕ようとすると