草鞋虫わらじむし)” の例文
拳闘家けんとうかは闘士となり、薬局の小僧は化学者となり、鬘師かつらしは美術家となり、泥工は建築師となり、御者は遊猟者となり、草鞋虫わらじむしは翼鰓虫となる。
と、其処に草鞋虫わらじむしの一杯依附たかった古草履の片足かたしか何ぞが有る。い物を看附けたと言いそうなかおをして、其をくわえ出して来て、首を一つると、草履は横飛にポンと飛ぶ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
久「お前のそばに芋虫のごろ/″\してはいられねえが、えゝ……簑虫みのむし草鞋虫わらじむし穿き、と」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
菱形のその列が人の顔のようにしかめる。眼にもつかないような小さな穴が、大きくなって谷になる。そのまわりにはいくつも山がある。一匹の草鞋虫わらじむしがはっている。それが象のように大きい。
石の間に「つんぼ」をさがし回ることは、身の毛のよだつような楽しみである。なお別の楽しみは、急に舗石しきいしを上げて草鞋虫わらじむしを見つけることである。
お椀の中へそっと草鞋虫わらじむしを入れて食わせてやっただ、そんな事は何うでもいが、おめえさんがおいとまになるならんにもたのしみがえからおらさがろうか知ら、下らばすぐ故郷くにけえるだよ
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あなぐら草鞋虫わらじむしと同じだ。少しは自分の身体をいたわるがいい。かわいそうに、まだごく若いのに、乳母うばの乳房を離れて二十年とはならず、母親もまだ生きてるだろう。
周囲から虫が集まってきていた。それで寄宿生らの間では、そのすみずみに特別なおもしろい名前をつけていた。蜘蛛くもすみ、青虫の隅、草鞋虫わらじむしの隅、蟋蟀こおろぎの隅などがあった。
そのために底の知れぬ恐ろしいすみずみができて、こぶしのように大きな蜘蛛くもや、足のような大きな草鞋虫わらじむしや、あるいはまた何か怪物のような人間までが、そこにうずくまっていそうだった。
「私は草鞋虫わらじむしでございます。」