若輩じゃくはい)” の例文
「拙者は、お奉行榊原主計さかきばらかずえ殿のご懇望もだしがたく、若輩じゃくはい烏滸おこがましいとは存じながら、ご助勢に参った、羅門塔十郎らもんとうじゅうろうと申しますもの」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「僕は初めから社長のお念仏には反対でした。しかし若輩じゃくはいの出しゃばる幕じゃないと思って、差控えていたんです」
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やや若輩じゃくはい過ぎし様なりしが、贋金を見せられ、片膝ついてぱらぱらと金をおとすあたりより、ぐつと引つ立ち、官左衛門に渡しし金も同じ贋金なりと聞き
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
大金にうとも惜しからじ、香木に不相応なる価を出さんとせらるるは、若輩じゃくはいの心得違なりと申候。
初代惣右衛門はこの村に生まれて、十八歳の時から親の名跡みょうせきを継ぎ、岩石の間をもいとわず百姓の仕事を励んだ。本家は代々の年寄役でもあったので、若輩じゃくはいながらにその役をも勤めた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
自分の決心が退避いだと云うのは、卑怯ひきょうな話だが、全くこの人間にあったらしい。平生から強がっていたにはいたが、若輩じゃくはいの事だから、見ず知らずの多勢の席へ滅多めったに首を出した事はない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若輩じゃくはい馬謖めは、要道の守りをすてて、わざわざ山上の危地に陣取ってしまった。何たる愚だ。魏軍が麓を取巻いて水の手を
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
香木に不相応なるあたいをいださんとせらるるは若輩じゃくはいの心得ちがいなりと申候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
けれどもそれは単に言葉の上の智識に過ぎなかった。若輩じゃくはいな自分は嫂の涙を眼の前に見て、何となく可憐かれんえないような気がした。ほかの場合なら彼女の手を取って共に泣いてやりたかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの、直江なおえ山城以来の人物といわれている国家老の千坂兵部が、軽輩も軽輩——とるにたらない若輩じゃくはいの自分へ
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老人のことばぐせとして、激すと、いかにも若輩じゃくはいを叱るようになる。けれど内蔵助は、その一句ごとにうなずいて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若輩じゃくはい謙信に、いやしくも用兵の神智と技術において、この一手を見事出鼻にさし込まれた信玄としては、その老練な分別や、最後の必勝を信念しても、人間的に
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの頃はよく、暴れ者が、つのめるために、愚堂和尚の室にあつまりましたなあ。和尚もまた、諸侯と牢人、長者と若輩じゃくはいのさべつなく、相手になってくだされた」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わけても若輩じゃくはいの身です、恐れながら、何とぞこの御用は余人へ仰せつけ願わしゅうぞんじまする
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「思えば。……今にして思えば、この信玄を、ひとは老巧というが、むしろ岐阜の信長や三河の家康などに、まんまと、あざむかれていたにひとしい。あの小国の若輩じゃくはいどもに」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若輩じゃくはいが——といわないばかりに彼が熱しれば熱しるほど政職は軽くあしらって
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに白髯はくぜんをたれ、老眼にもなりながら、まだその心域にいたれぬ方があらば、まず、自身を恥じるがよい——また、若輩じゃくはいな学僧たちは、そんな他人のことに、騒ぎたてて、無益の時間をつぶす間に
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それがしは、神子上典膳みこがみてんぜんという若輩じゃくはいです」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)