苗床なえどこ)” の例文
『貧しても五坪の庭じゃ。まだちと早いが、この夏は、糸瓜へちまの棚に、朝顔の垣でも作ろうかと思うて、きょうは、苗床なえどここしらえておるのじゃ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに荷担した大名有司らが謹慎や蟄居ちっきょを命ぜられたばかりでなく、強い圧迫は京都を中心に渦巻うずまき始めた新興勢力の苗床なえどこにまで及んで行った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
のこと、おかみさんがこのまどところって、にわながめてると、ふとうつくしいラプンツェル((菜の一種、我邦の萵苣(チシャ)に当る。))のそろった苗床なえどこにつきました。
その頃からこの坊さんは単に読み書きばかりでなく、少年だましいの苗床なえどこに、いろいろな訓育をさずけてくれた恩師である。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるところは尾州旗本領、あるところはいわゆる交代寄り合いの小藩なる山吹領というふうに、公領私領のいくつにも分かれた伊那地方が篤胤研究者の苗床なえどこであったのも、決して偶然ではない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その悪風を一掃して、小野の道場は、正しい、若々しい、時代の苗床なえどことならねばならぬ。——そうせねば、忠明が身を退いて、改革いたす意味もないことになろう
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
洟汁はなじるを垂らしていたり、甚だしきは寝小便をしたり、取っ組んだり、泣きわめいたり、始末におえない存在ではあったが、秀吉のこころでは、小姓部屋こそ、人材の苗床なえどこ、わが家の宝でもあると
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)