色情狂いろきちがい)” の例文
貧民窟の人々も、淫売婦仲間でも、お春を『色情狂いろきちがい! 色情狂』と呼んだが、そのお春は朝からやつて来て栄一の所を離れないのである。
「もしこの芳香をたてつづけに、四半刻しはんときというものをきいていたならば俺はそれこそ色情狂いろきちがいになろう」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
申すまでもない事で、円髷と銀杏返を見るたびに、杓を持って追掛おいかけるのでは、色情狂いろきちがいを通り越して、人間離れがします、大道中だいどうなかで尻尾を振る犬とへだたりはありません。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「会わすも会わさぬも親の権利。骨が舎利しゃりになっても、動くもんか。けえけえれ、色情狂いろきちがいめ」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悪漢は悪漢に相違ないが、なんぼなんでも悪漢ぶりがこれでは露骨過ぎる——気ちがいだ、気ちがいだ、女に見惚みとれて、いきなり発作した色情狂いろきちがいと見るよりほか、見ようがない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御覧の通り唖娘おしむすめの上に色情狂いろきちがいで、あの裏山の中の土蔵の二階窓から、山行の若い者の姿を見かけますと手招きをしたり、アラレもない身振をして見せたり致しますので、跛の門八じいが外に出る時には
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「このろくでなし……不具者かたわもの! 色情狂いろきちがい!」
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
色情狂いろきちがいで、おまけに狐憑きつねつきと来ていら。毎日のように、差配のうちの前をうろついて附纏つきまとうんだ。昨日もね、門口の段に腰を掛けている処を、おおきな旦那が襟首を持って引摺ひきずり出した。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お前の綺麗な裸身はだかを見せて、色情狂いろきちがいの範覚を迷わせてやろうと、もくろんだのさ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
車夫は、藍川館まで附絡つきまとった、美しいのにげられた、色情狂いろきちがいだと思ったろう。……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「驚いたなあ、色情狂いろきちがいだ。よしよしそいつは解っている、何さ、お前は別嬪べっぴんだよ、どうしてなかなか隅へは置けない、別嬪別嬪素晴しいものだ。が、別嬪はよいとして、お前の家はどこなのかな?」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
馬鹿、狂人きちがいだ。此奴こいつあ。おい、そんな事を取上げた日には、これ、この頃の画工えかきに頼まれたら、大切な娘の衣服きものを脱いで、いやさ、素裸体すッぱだかにして見せねばならんわ。色情狂いろきちがいの、じじいの癖に。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
色情狂いろきちがいじゃ、それ逃げろ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)