自由まま)” の例文
それも夢のように消えて、自分一人になると、自由ままにならぬ方の考えばかり起ッて来て、自分はどうしても此楼ここに来年の四月まではいなければならぬか。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
さりとてこの人猿に自由ままにもなれず、進退きわまって立ちすくんでいると、その弥生のようすを承諾の意ととったものか、つかつかとかえってきた豆太郎
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それじゃあ妾はどんなことをしても、がれることは出来ないんだね。仕方がないから自由ままになろうよ」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
本当によくも未来も忘れましてどうぞまあ一晩安々て、そうして死にますれば、思い置く事はないと存じながら、それさえ自由ままになりません、余りといえば悔しゅうございましたのに
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……芝口しばぐち結城問屋ゆうきどんやの三男坊で角太郎かくたろうというやつ。……男はいいが、なにしろまだ部屋住へやずみで、小遣いが自由ままにならねえから、せっせと通っては来るものの、千賀春はいいあしらいをいたしません。
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
こゝろ自由ままなる人間は、とはにづらむ大海を。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「あんまりそんな真似をすると、謝絶ことわッてやるからいい。ああ、自由ままにならないもんだことねえ」と、吉里は西宮をつくづくて、うつむいて溜息をく。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
さようでございます。やめまして、小普請お坊主として、からだが自由ままになるようになってから、まもなくのことでございました。わたくしがいやで、いやで、顔を
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それというのも田沼主殿頭、己が下り坂を支えんためでござる。すなわち将軍家をなきものにし、己の自由ままになる幼主を立て、我意を振るわんそのためでござる」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いかさまお菊殿はあなたにとっては、自由ままになるご内儀でござりましょう。が、しかしご内儀のお菊殿から云えば、自分一人だけの勝手の用事も、自らあろうというもので。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「藤井右門の遺児わすれがたみとしては、お粂はおれには怨敵だが、しかしおれはあの女が好きだ。手に入れて自由ままにした上で、息の根を止めてやることにしよう」——で源兵衛にもむねを含め
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
山海の珍味、錦繍きんしゅうの衣裳、望むがままに買うことも出来、黄金こがねかんざし瑇瑁たいまいくし、小判さえ積めば自分の物となる。そうです。実に小判さえ出せば万事万端おの自由まま——これが江戸の習俗ならわしです。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さあね、大して善人じゃあねえ。だがこいつもご時世のためだ。こんな事でもしなかったら、酒も飲めず、ととも食えず、美婦たぼ自由ままにゃあ出来ねえってものよ。恨むなら田沼様を恨むがいい」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「上州、お前は自由ままにするがいい、俺は逃げるぜ。相手が悪い!」
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこで下等ではござりまするが、金の力で自由ままにします。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)