義母はゝ)” の例文
夕食の膳には義母はゝの郷里の名産、竹輪がのつてゐた。娘たちがあまり急いで飯をかき込むので、義母は、気を揉みながら
荒天吉日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
所詮ながい間の空想を實現させたので、無論父にも義母はゝにも無斷だ。彼は此の突飛とつぴきはまる行動に、勝見の一をまごつかせて、年來ねんらい耐へに耐へた小欝憤せうゝぷんの幾分をらしたのである。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
氣に逆らつてもならぬからとて義母はゝが手づから與へられし皮蒲團を貰ひて、枕もとを少し遠ざかり、吹く風を背にして柱の際に默然として居る父に向ひ、靜に一つ二つ詞を交へぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
義母はゝにいはせると「世津子は理窟つぽい」さうだが、おそらく、頭が理論的だといふよりも好きな読物の影響であらうと彼は推察してゐるのである。
荒天吉日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
さからつてもならぬからとて義母はゝづからあたへられし皮蒲團かはぶとんもらひて、まくらもとをすことほざかり、かぜにしてはしらきは默然もくねんとしてちゝむかひ、しづかひとふたことばまじへぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
離れから義母はゝの呼ぶ声がする。飛んで行くと、茶箪笥から缶を取り出し、老人に配給のあつたおこしを五つ六つ小皿に盛つて、こんなものでも貞爾のお茶菓子にと云ふのであつた。
荒天吉日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)