絵草紙えぞうし)” の例文
旧字:繪草紙
ただ食事のために作った茶碗ちゃわんや食卓、酒のつぼ絵草紙えぞうしや版画の類あるいは手織木綿もめんのきれ類といった如き日常の卑近なるものでありながら
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
たまに両親りょうしんまちへいってってきてくれた絵草紙えぞうしや、おもちゃなどがあると、それを良吉りょうきち文雄ふみおにもせてやったり、してやったりいたしました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
わしの仕事なぞは貧乏人の子供対手あいてだ。これでずいぶん丹精たんせいはして造る。こんなあほらしいような絵草紙えぞうし一枚だって見かけよりゃ骨を折っとるんだ。
三寸の地球儀、大黒だいこくのはがきさし、夷子えびすの絵はがき、千人児童の図、八幡太郎はちまんたろう一代記の絵草紙えぞうしなど。いとめづらし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しめやかなランプの光の下に、私は母と乳母とを相手に、暖い炬燵こたつにあたりながら絵草紙えぞうし錦絵にしきえを繰りひろげて遊ぶ。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして「恨み重なるチャンチャン坊主ぼうず」が、至る所の絵草紙えぞうし店に漫画化されて描かれていた。
つまり日本の昔の絵草紙えぞうしなんかに出ていた人間と同じような姿なんだ。これはお前が、たましいとは、そんな形のものだと前から思っていたので、今はそういう形にまとまっているのだ
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
伝通院でんずういん縁日えんにちで、からくりの画看板えかんばんに見る皿屋敷のおきくころし、乳母が読んで居る四谷怪談よつやかいだん絵草紙えぞうしなぞに、古井戸ばかりか、丁度其のそばにある朽ちかけた柳の老木おいきが、深い自然の約束となって
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
翌年主人が東京に還り家族を呼迎えた後もなお主家にとどまり、主人が世を去る時まで誠実に仕えていたので、正妻川田氏は深くしげ次をあわれみ、資金を与えて和泉橋通に絵草紙えぞうし店を開かせたそうである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)