経歴へめぐ)” の例文
が、地方としては、これまで経歴へめぐつた其処彼処そこかしこより、観光に価値あたいする名所がおびただしい、と聞いて、中二日なかふつかばかりの休暇やすみを、紫玉は此の土地に居残いのこつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私はまだこれから、いろいろの朝と夜とで満ちた命の間に、日の光りさえ及ばぬ遠国のはてまでも経歴へめぐって、とうとい秘密が草木の若芽にも輝く御山を求めに行かねばなりませぬ。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
が、地方としては、これまで経歴へめぐったそこかしこより、観光に価値あたいする名所がおびただしい、と聞いて、中二日ばかりの休暇やすみを、紫玉はこの土地に居残った。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
半年経歴へめぐってもいただきにはかれないと、樵夫きこりも言ったんだが、全体何だって、そんなにかくして置く山だろう。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……どこと申して行く処に当は無いので、法衣ころもを着て草鞋わらじ穿くと、直ぐに両国から江戸を離れて、安房あわ上総かずさを諸所経歴へめぐりました。……今日こんにちは、薬研堀を通ってこっちへ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
饂飩うどんで虐待した理由わけというのが——紹介状をつけた画伯は、近頃でこそ一家をなしたが、若くて放浪した時代に信州路しんしゅうじ経歴へめぐって、その旅館には五月いつつきあまりも閉じもった。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きっと心を取直し、丈に伸びたる夏草を露けき袖にて押分け押分けなお奥深く踏入りて忍び込むべき処もやと、彼方あなた此方こなた経歴へめぐるに、驚くばかり広大なる建物の内に、住む人少なければ
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天井へ宙乗ちゅうのりでもするように、ふらふらふらふら、山から山を経歴へめぐって……ええちょうど昨年の今月、日は、もっと末へ寄っておりましたが——この緋葉もみじ真最中まっさいちゅう、草も雲もにじのような彩色の中を
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)