終日いちんち)” の例文
それに診察におりる以外には、少しでも動く事を禁じられてゐるので、終日いちんち蒲團の上にそつとしてゐなければならなかつた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
けれど、それにはみみかたむけず、まちのカフェーへいって、外国がいこくさけんだり、紅茶こうちゃきっしたりして、終日いちんちぼんやりとらすことがおおかったのでした。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、飯だ、飯だ、今日きょうは握り飯二つで終日いちんち歩きずめだったから、腹が減ったこったらおびただしい。……ははは。こらあ何ちゅうさかなだな、あゆでもなしと……」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「閑静でいいなあ、別世界へでも来た気がする。終日いちんち他人の顔を見ないですむという生活だからなあ」
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
十五日には外へも出ませず、終日いちんち此処こゝにうむ/\うなりながら寝て居りました
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日曜だというと、二人は教会の入口へ行って、終日いちんちそこに佇んでいた。そして、出たり這入ったりする人を眺めては、その数知れぬ顔のうえに、遠い昔のなつかしい面差を探しているのだった。
親ごころ (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
うちにゐると祖父そふから終日いちんちなんだかだと解らない事を言つて、がみ/″\言はれるのが五月蠅くてたまらないので、どこか一人かけ離れたところへ遁げて
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
それに丁度、來てから薄曇つた日ばかり續いて、三月と言つてもまだほろゝ寒い潮風に、閉切つた障子は終日いちんちどんよりと蔭つてばかりゐた。外へ出てたつて探す日向もなかつた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
その翌日、青木さんは終日いちんち二階からお下りにならないで画をかいてお出でになつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)