箇所ところ)” の例文
いあんばいに、天人の彫りは無事で、げた箇所ところ波形なみがただけですが、その波形はほりでなくって、みんな、薄い板が組み合せてあるのです。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
遙かの行く手に、明るく黄金色に輝いている箇所ところがあった。林が途切れて、陽が当たっている箇所らしい。その光明界を眼ざして左門は歩いて行くように見えた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「三輪君のは箇所ところが悪いから大骨を折ったよ。幾度も席を替えて貰って漸く田口君の註文を果した」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
風早學士は、何時の間にか其の雪の薄ツすりと消殘ツてゐる箇所ところまで來て了ツた。かまはず踏込むで、踏躙ふみにじると、ザクザクしづかな音がする……彼は、ふと其の音に耳を澄まして傾聽した。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
その癖おそろしく素敏すばしっこい昆虫むしめが、とても我慢が出来ないほどチクチクと彼のからだすものだから、手を一杯にひろげて彼は螫された箇所ところをポリポリ掻きむしりながら、思わず
『そんな箇所ところたゝ必要ひつえうはない』とつて歩兵ほへい
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
菩薩、苦行者、左門の姿は、遙かの彼方かなたで、この時、カッと輝いて見えた。光明世界へ——林が途切れて、陽光の射し溜まっている箇所ところへはいったからであろう。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
客は荒田こうでんと近ごろすきを入れた畠との間を、拾うようにして進まなければならなかった。チチコフはそろそろ疲れを覚えはじめた。ともすれば足の下からじくじくと水の浸み出すような箇所ところが多かった。
けれども何処からも血は出ていず、弾傷たまきずらしい箇所ところなどは何処にも無いのでございます。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)