“礼(いや)” の例文
旧字:禮
また来たりておもむろに別れを述べんと言いつつ青年は身を起こして庭に立ち、軽く礼(いや)して立ち去らんとす。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
うやうやしき礼(いや)の八千度さかしらのわがひと言はゆるし賜(た)ぶべし。
わが礼(いや)申すを受け給へ。女(おんな)の友等。
青年(わかもの)の入り来たれるを見て軽く礼(いや)なしつ、孫屋の縁先に置かれし煙草盆(たばこぼん)よりは煙真直(ますぐ)にたちのぼれり。君が今朝(けさ)の装衣(いでたち)はと翁まず口を開きてやや驚けるようなり。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
礼(いや)申すにも優しかれ。
門(かど)を出(い)ずれば角(かど)なる茶屋の娘軒先に立ちてさびしげに暮れゆく空をながめいしが、われを見て微(かす)かに礼(いや)なしぬ、貴嬢(きみ)はこの娘を憶えいたもうや。賤(いや)しきこの娘を。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
われ等礼(いや)申す。
軽く礼(いや)して、わが渡す外套(がいとう)を受け取り、太くしわがれし声にて、今宮本ぬしの演説ありと言いぬ。耳をそばだつるまでもなく堂をもるるはかれの美(うる)わしき声、沈める調(ちょう)なり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)