磯辺いそべ)” の例文
旧字:磯邊
この最後の一首は、磯辺いそべ病院でせられたまくらもとの、手帳に書きのこされてあったというが、末の句をなさずかれたのだった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
金剛の道をきくばかりにほど遠い磯辺いそべの家をも捨てて来たのだと思いながら、知恵のよろこびにもえ立ってひた上りに上って来たのでございます。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
磯辺いそべの貝や小魚にたわむれていた子が、興にうかれて沖へ遠く歩み出して行ったような——愛するが故の怒りが——堪らない不安になって賛五郎の胸をさわがせた。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅虫というところまで村々みな磯辺いそべにて、松風まつかぜの音、岸波のひびきのみなり。海の中に「ついたて」めきたるいわおあり、その外しるすべきことなし。小湊こみなとにてやどりぬ。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
磯辺いそべには、いわにぶつかってなみがみごとにくだけては、水銀すいぎんたまばすように、っていました。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
「何だか俺は気でもちがいそうに成って来た。一寸磯辺いそべまで行って来る」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)