砒石ひせき)” の例文
「お忙しいところをお氣の毒樣で、他ぢやございませんが、ね、先生。石川屋の内儀は、ありや砒石ひせきの中毒に間違ひありませんね」
何んのあいつが眠剤なものか! 毒も大毒砒石ひせきだあね。……あいつを飲むと中納言様、即座に血へどをお吐きになり、こわやの怖やのご落命。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
譬えば緑青ろくしょう中毒や砒石ひせき中毒は羽毛かあるいは筆の先でのどをくすぐって胃中の物を吐出させておいてそれから生玉子を飲ませるのが応急の手当だ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
青酸は毒のもっともはげしきものにして、舌にふるれば、即時にたおる。その間に時なし。モルヒネ、砒石ひせきは少しくかんにして、死にいたるまで少しく時間あり。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
砒石ひせきか鳳凰角を盛られたものだということがわかったので南番所係で大車輪に探索していたが、今日にいたるまで原因も下手人もようとして当りがつかず
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
じっさいあぶない。レオナルド・ダ・ヴィンチという人は桃の幹に砒石ひせきを注射してね、その実へも毒が回るものだろうか、どうだろうかという試験をしたことがある。ところがその桃を
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そもじは、砒石ひせきの蒸気を防ぐために、硫気を用いたのであろうけれど、それが市松のくぼみにまった水に溶け、くろずんだことゆえ、まっすぐなものも、かえって反りかえって見えたのじゃ。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
砒石ひせきの用法をあやまった患者が、その毒の恐ろしさを知りぬきながら、その力を借りなければ生きて行けないように、葉子は生の喜びの源を、まかり違えば、生そのものを虫ばむべき男というものに
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「色も匂ひも味もないところを見ると、砒石ひせきだらうと言ふことで、喰べ殘しの小さいかけらを、本道の石齋が持つて行きましたが」
道人一膝進めたが、さらに四辺あたりを憚かるように、「幹之介殿、お尋ねしたい、砒石ひせきどこから手に入れられたな?」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
紅き色には砒石ひせきの混じたるあり。坊間ぼうかんに販売する染色料の唐紅は多量の砒石を含有するを以て最も危険なり。安菓子にこれを用いたるものあり。また小児の玩具にこれを塗りたるもあり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
実際危険あぶない。レオナルド、ダ、ヸンチと云ふ人は桃のみき砒石ひせきを注射してね、其実そのみへも毒がまはるものだらうか、どうだらうかと云ふ試験をした事がある。所が其桃をつて死んだ人がある。危険あぶない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
蝋燭ろうそくしんの中に砒石ひせきを混ぜておいたのです。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「佐太郎は砒石ひせきの中毒だ。石見いはみ銀山鼠捕りかなんか、酒へでも入つてゐたのだらう。これは御檢屍を受けなければなるまい」
そやつを利用し企てたのさ! 尾張宗春の毒殺をな! お紋の手を借り書面と砒石ひせき、まず八重梅へつかわしたのさ! 志水幹之介の手を通し、今夜のうちに宗春を
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あれは矢張り砒石ひせきであつたよ。砒石には味も匂ひも無いから、うんと盛られても氣がつくまい、——多分石見銀山かな」
平賀源内が苦心をして、蘭医の杉田玄白から、分けて貰った砒石ひせきの一種、相当永い時間を経た時、人の命を安らかに取り、しかも痕跡を残さない毒素、それが入れてある薬湯だからであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
石見いはみ銀山鼠捕りは、砒石ひせきが入つて居るが、砒石といふものは、恐ろしい毒で、色も味も臭ひもないものだといふことだ。
「佐太郎は砒石ひせきの中毒だ。石見銀山鼠捕りなんか、酒へでも入っていたのだろう。これは御検屍を受けねばなるまい」
石見銀山といふのは砒石ひせきだ。砒石の中毒はひどいのになると目舞ひがして引きつけるやうになり、ふるへが來て一ぺんに死ぬ。この家のお内儀がそれだ。
平次の馴れた眼で見ると、間違ひもなく毒死で、前後の樣子を聽くと、砒石ひせきの中毒といふことがわかります。
石見銀山いはみぎんざん鼠捕り』の砒石ひせきとわかりましたが、さて、誰が一體そんな事をしたのか、土地の御用聞が三四人顏を寄せましたが、まるつきり見當もつきません。
馬でも殺せるほどの毒藥——石見いはみ銀山鼠捕りといふ、砒石ひせき劑が入つて居り、お關が一と口で氣が付いて主人の椀を取り上げたのは、全く命拾ひといふ外はありません。
「いや、そうまでいわれては仕方がない。実は、棟梁佐太郎が死んだのは、あれは砒石ひせき中毒かも知れない——石見いわみ銀山鼠捕りでも呑まされたのだろうと一度は思ったが」
「いや、さうまでいはれては仕方がない。實は、棟梁佐太郎が死んだのは、あれは砒石ひせき中毒かも知れない——石見銀山鼠捕りでも呑まされたのだらうと一度は思つたが」
これは恐らく南蠻なんばん物であらう、——ところが、暫らく後で發病した、この家の主人永左衞門殿の呑んだのは、それと全く違つたありきたりの、石見いはみ銀山鼠捕り、つまり砒石ひせきぢや。
御樣子は間違ひもなく砒石ひせきの中毒だといふことで、いろ/\調べましたが、矢張りお酒の中に毒が入つて居たやうで、現に一緒に呑んだ伊賀屋さんも同じ容體でひどく苦しんだ相ですが
珠玉、細工物、ギャーマン、羅紗らしゃ、それに南蛮物の生薬きぐすりの数々。その中には万兵衛が呑んだと思われる吐根とこんも、佐太郎を殺したと思われる砒石ひせきも交っていたことはいうまでもありません。
珠玉、細工物、ギヤーマン、羅紗らしや、それに南蠻物の生藥きぐすりの數々。その中には萬兵衞が呑んだと思はれる吐根とこんも、佐太郎を殺したと思はれる砒石ひせきも交つてゐたことはいふまでもありません。
「そこが新之助のずるいところさ。内儀の藥は四服殘つて居た。そのうち一服を砒石ひせきと替へて置けば、翌る日の晝までにはきつと呑むから、内儀は新之助の留守中に死ぬことになるぢやないか」
御様子は間違いもなく砒石ひせきの中毒だということで、いろいろ調べましたが、やはりお酒の中に毒が入って居たようで、現にいっしょに呑んだ伊賀屋さんも同じ容体でひどく苦しんだそうですが
石見銀山いわみぎんざん鼠捕り、つまり砒石ひせきじゃ、二人の症状はまるで違う
砒石ひせきだよ——石見いはみ銀山鼠取りかも知れない」