石壁せきへき)” の例文
最後に夫人も僕等も思ひ思ひに立つて踊り廻つた。洞窟の石壁せきへきに映るその影を面白がつて椅子につて居たのは晶子であつた。十二時に迎への馬車が来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
巡査のかざす松明はかたえ石壁せきへき鮮明あざやかてらした。壁は元来が比較的にひらたい所を、更に人間の手にってなめらかに磨かれたらしい。おもてには何さま数十行の文字もんじらしいものが彫付ほりつけてあった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
めた。敵塁の右のはじの突角の所が朧気おぼろげに見え出した。中央の厚く築き上げた石壁せきへきも見え出した。しかし人影はない。はてな、もうあすこらに旗が動いているはずだが、どうしたのだろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
石壁せきへき銃眼じゆうがんとほす空のいろ高粱稈カオリヤンがらは積みて冬なり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
石壁せきへきの上に地上の街の名が書かれて其れが度度たび/\変るのでおよそ三ちやうも屈折して歩いて居る事がわかつた。死の世界にも人間界の街の名が及んで居るのを可笑をかしいと思つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
先に立つた見物人が足をとゞめてもとの墓地の名やたま/\ある墓標のぬしの姓氏を読んだり、又英米の旅客りよかくが自身の名を石壁せきへきの上にとゞめたりするので生きた亡者まうじやの線は幾度か低徊ていくわいする。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)