眞田紐さなだひも)” の例文
新字:真田紐
その眞田紐さなだひもを、覗けば見えるやうな隣の部屋へはふり込んで、燈芯のやうに弱い赤い紐なんかを卷いて置くのも細工が過ぎて本當らしくありません
織屋おりや何處どこつてもういふひなびた言葉ことば使つかつてとほしてゐるらしかつた。毎日まいにち馴染なじみのいへをぐる/\まはつてあるいてゐるうちには、脊中せなか段々だん/\かろくなつて、仕舞しまひこん風呂敷ふろしき眞田紐さなだひもだけのこる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
でも鍵を忘れたり、棒に附けた眞田紐さなだひもを解かずに、そのまゝ逃げ出したところは矢張り素人しろうとだね。彌惣におどかされて、よく/\思ひ詰めたんだらう
六十年配の洗練された老人の顏は、苦惱にゆがんで少しはれつぽく、首に深々と眞田紐さなだひもで絞めた跡が殘つて居りました。
「御覽の通り、頸には、絞め殺した時のひもあとが付いて居るが、それで見ると、刀のか前掛の紐か、——兎に角、恐ろしく丈夫な一風み方の變つた眞田紐さなだひもだ」
脇差のつか眞田紐さなだひもが少し濡れて居りますから、間違ひは御座いません、——人を一人斬つて、二人目を斬る前に、刀を洗ふのは、並大抵の曲者にしては悠長過ぎはしませんでせうか
平次は明かに、お糸のむじつを、たつた一本の眞田紐さなだひもで證明しようとして居るのです。
裏庭のがけ下に、石の地藏樣を抱いたまゝ轉げ落ちて、その上、刺身庖丁さしみばうちやうで首筋を深々と刺され、更に、しまの前掛で顏を包んで、眞田紐さなだひもでその上を、耳から眼、鼻へかけて縛つてあるのです。
近づいて見ると、僅かにれる朝の光の中乍ら、お市の顏色や表情の凄まじいことにすぐ氣が付きます。その上首に卷きつけたのは、蛇のやうなまだらの紐——前掛の眞田紐さなだひもではありませんか。
反對の端の方には三尺ほどの丈夫な眞田紐さなだひもが確かと結へてあつたのです。
「この眞田紐さなだひもはお父さんの前掛の紐だつたさうだね」
「その代り丈夫ですよ、眞田紐さなだひもだから」