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さなだひも
早朝、誘いに来てくれた留さんは、わらじ
脚絆に、
印絆纒を着、
真田紐でしばった大きな弁当箱を肩に掛け、いなせな
鳶みたいな恰好していた。
彼女は
掌の中に男の腕を
挾んでひきよせていた。ほどけた
真田紐を丁寧に巻きつけている女の容姿もやつれていた。
でも鍵を忘れたり、棒に附けた
眞田紐を解かずに、そのまゝ逃げ出したところは矢張り
素人だね。彌惣に
脅かされて、よく/\思ひ詰めたんだらう
六十年配の洗練された老人の顏は、苦惱に
歪んで少し
脹つぽく、首に深々と
眞田紐で絞めた跡が殘つて居りました。