目戍みまも)” の例文
お糸は縮緬ちりめん風呂敷ふろしきにつつんだ菓子折を出した。長吉は呆気あっけに取られたさまで物もいわずにお糸の姿を目戍みまもっている。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さわやかなるに驚きて、はかばかしく答もなさず、茫然としてただ、その黒檀こくたんの如く、つややかなるおもて目戍みまもり居しに、彼、たちまちわが肩をいだいて、悲しげに囁きけるは
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いと縮緬ちりめん風呂敷ふろしきにつゝんだ菓子折くわしをりを出した。長吉は呆気あつけに取られたさまでものはずにおいと姿すがた目戍みまもつてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ほとんの目も離さぬほど自分の行いを目戍みまもっているらしい母親の慈愛が窮屈でたまらないだけ
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ほとんの目も離さぬほど自分のおこなひを目戍みまもつてるらしい母親の慈愛じあい窮屈きゆうくつたまらないだけ
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いつも/\見捨てられはせぬかと、男の心の變動を疑ふ物狂ものぐるはしい樣子とは全く變つて、をんなは私が寧ろ氣味惡る氣に目戍みまもる其の顏を見返して、問はるゝまゝに事情を話した。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
みひらきて浮世を目戍みまも貪婪どんらんの眼の「奢侈」。