あかぎれ)” の例文
これほど親しいお牧では有りましたが、しかし彼女のあかぎれの切れた指の皮の裂けたやうな手を食事の時に見るほど、可厭いとはしいものも有りませんでした。
そこで、上眼うわめを使って、弟子の僧の足にあかぎれのきれているのを眺めながら、腹を立てたような声で
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
へえー芝居しばゐにありさうですな、河竹かはたけしん七さんでも書きさうな狂言きやうげんだ、亀裂ひゞあかぎれかくさうめに亭主ていしゆくま膏薬売かうやくうり、イヤもう何処どこかたにお目にかゝるか知れません。
土質の酸に沁み込まれたあかぎれやひびが眼についた。実際、彼の家も何かと絶えず闘っていた様子ながらも、蔵や母屋の膝から上は、まだ健康そうな色艶を失っていなかった。
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
荒物屋でも買物をしたことがあるが、店番をしていた小女は眠そうな顔をしていて、手の甲にあかぎれをきらしていた。私はなんとなくこの家の主人は慳貪けんどんなのではなかろうかと想像した。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
「省さん、蛇王様はなであかぎれの神様でしょうか」
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あかぎれなんどにや、よくいた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ヤアの賭場どばまでって来たのだ、今はひゞあかぎれ白足袋しろたびで隠し、なまぞらをつかっているものゝ、悪い事はお前より上だよ、それに又姦夫々々まおとこ/\というが、あの女は飯島平左衞門様の妾で
ついでに、太助が小屋から里芋の子を母屋の方へ運んで行きますと、お牧がそれに蕎麥粉を混ぜて、爐の大鍋で煮て、あのあかぎれの切れた手で芋燒餅といふものをこしらへて呉れたことも書いて置きませう。