ぐせ)” の例文
実に、この日の敗戦が、魏軍にとって、ぐせのつき始まりとなった。以後、連戦連敗、どうしても朱桓の軍に勝てなかった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ二十五六の、遊びぐせの拔け切らないのを、叔父の佐兵衞に引取られて、年上の從兄いとこ吉三郎と一緒に、商賣を仕込まれてゐるといつた、一寸好い男です。
これには、彼という人間全体にしみとおっている無意識なうそつきぐせが、あずかって大いに力があったのだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ぐせ浄瑠璃じょうるりのサワリで泣声をうなる、そのときの柳吉の顔を、人々は正当に判断づけていたのだ。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
武道家の門人として、大小を帯び、侍には装っているが、善鬼の肥肉ひにくは余りにたくましすぎて、その起居たちいまでも、前身の船頭ぐせから脱けなかった。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり、叩きぐせにも、丁型ちやうがたの人と半型はんがたの人と、丁半入れ交ぜに叩く人とあるわけだ。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
中には赭顔しゃがん白髪の老船頭もいて、これらは“風見”“水見”といって、内海の水路や天気ぐせなどはをさすようにそらんじている海の古老たちだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうしても盜みぐせが直されねえ、知つての通り俺は暮しに困るわけぢやなし、金が欲しくて盜みをするわけぢやねえ、——今まで盜んだ金や品を、たつた一つも身につけないのはその爲だ。
老人のことばぐせとして、激すと、いかにも若輩じゃくはいを叱るようになる。けれど内蔵助は、その一句ごとにうなずいて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(身を、生れながら微賤びせんと思え。大名という育ちぐせがあればこそ、武士のしつけがあればこそ、腹も立つ、血もいきどおる。御奉公のおん為に、七日は、眼をつぶって——)
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その様子は、常の小六と変ったところもないので、天蔵はいつものぐせをすぐ出して
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐせのように——大阪が恋しい、大阪が恋しい、となげいていたお米を嘲笑わらって
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに、おとといからの雷鳴りぐせが今日も遠くで鳴り出している。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)