疎々うと/\)” の例文
まる/\と肥つた力三が一番秘蔵で、お末はその次に大事にされて居た。二人の兄などは疎々うと/\しく取りあつかはれて居た。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
其は然し、二月ばかりの間で、兩人の関係は何時とはなく疎々うと/\しくなツた。其でも綾さんは毎日のやうにやツて來て、母や妹と一ツきりづゝ話して歸ツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼が家をつ前の晩のこと、夕暮時に、庭を散歩してゐる彼をふと見かけ、彼を見乍ら、今は疎々うと/\しくなつてゐるけれど、この人が嘗ては私の生命を救ひ、而も
と此の頃疎々うと/\しくされて居た新吉に呼ばれた事でございますから、心嬉しくずか/\と出て来ました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
殿樣は近頃本妻のお鈴の方に疎々うと/\しくなつて、家の跡取も、年上といふ理由をつけて、庶腹しよふくの徳松にきめるつもりらしい、——が、それでも奧方が丈夫で光つてゐるし
青年も、美奈子が、——一度あんなに彼に親しくした美奈子が、又掌をかへすやうに、急に再び疎々うと/\しくなつたことが、彼の責任であることに、彼も気が付いてゐなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
朝から晩まで戸外に居るが、その後妻のお兼とお柳との仲が兎角面白くないので、同じ家に居ながらも、信之親子と祖父母や其子等(信之には兄弟なのだが)とは、宛然さながら他人の樣に疎々うと/\しい。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
嬉しきは月の夜の客人まらうど、つねは疎々うと/\しくなどある人の心安こゝろやすげによりたる、男にてもうれしきを、ましてをんなともにさる人あらば如何いかばかり嬉しからん、みづからいづるにかたからばふみにてもおこせかし
月の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何とやらん御間柄が疎々うと/\しゅうなられたように覚えます。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)