おい)” の例文
さして浜荻といへるは古き諺にて即国の方言なれば伊勢の浜辺においたる芦は残らず浜荻と云べし古跡と云はあるべからず此歌に明らかなり
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
一同は早速水茶屋の床几をはなれ、ここにもおい茂る老樹のかげに風流な柴垣を結廻ゆいめぐらした菜飯茶屋の柴折門しおりもんをくぐった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
とお貞は今更のごとく少年の可憐なるさまみまもられける。水上芳之助は年紀とし十六、そのいう処、行う処、無邪気なれどもあどけなからず。辛苦のうちにおいたちて浮世を知れる状見えつ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一同はそれらの小屋をも後にして俗に千本桜といわれた桜の立木の間をくぐり抜け、金竜山きんりゅうざん境内の裏手へ出るとそぞろ本山開基の昔を思わせるほどの大木が鬱々うつうつとしておい茂っている。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
万年草まんねんそう、高野山大師の御廟にあり一とせに一度日あってこれを採と云此枯たる草を水に浮めて他国の人の安否を見るに存命なるは草。水中にいきおいたるがごとし亡したるは枯葉そのまゝ也
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
継て跡よりおい出るもの片葉の蘆多し故に水辺ならざる所にもあり難波なにはかぎら八幡淀伏見宇治やはたよどふしみうぢ等にも片葉蘆多し或人あるひといはく難波は常に西風烈しきにより蘆の葉東へ吹靡きて片葉なる物多しといふは辟案なり
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
おい茂るべきやしなひをいかで求め得べきよ。