生暖なまあたた)” の例文
たがいに何だか訳の分らない気持がしているところへ、今日は少し生暖なまあたたかい海の夕風が東から吹いて来ました。が、吉はたちまち強がって
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
種彦はまアしばらく暫くと声を上げ、岸の上をば行きつ戻りつ、消え行く舟を呼び戻そうとしていると、たちま生暖なまあたたかい風がさっと吹き下りて
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そらいろ銀色ぎんいろひかって、生暖なまあたたかなのことでありました。としをとったおんなが、はまほうから、かごのなかに、たくさんのたらをいれてりにまいりました。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある生暖なまあたたかい日の暮れです。僕はこの部屋のテエブルを中に漁夫のバッグと向かい合っていました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
薮畳やぶだたみを控えた広い平地にある紙漉場の葭簀よしずに、温かい日がさして、かぞを浸すために盈々なみなみたたえられた水が生暖なまあたたかくぬるんでいた。そこらには桜がもう咲きかけていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「この生暖なまあたたかな陽気ようきじゃ、たらはくさってしまうだろう。うんとまけてゆけばってもいい。」
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)