玩具箱おもちやばこ)” の例文
今はこの話に出て来る雛も、鉛の兵隊やゴムの人形と一つ玩具箱おもちやばこに投げこまれながら、同じ憂きめを見てゐるのかも知れない。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
横浜! 横浜! とあるひは急に、或はゆるく叫ぶ声の窓の外面そとも飛過とびすぐるとともに、響は雑然として起り、ほとばしづる、群集くんじゆ玩具箱おもちやばこかへしたる如く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ごみごみした、玩具箱おもちやばこをひつくり返したやうな、桟橋が、遠くなるまで、切れたテープを、富岡は頭の上で振つてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
これ人形にんぎやうは、はい、玩具箱おもちやばこ引転返ひつくりかへしたなかからばかりるもんではねえで、の、見事みごとなに不思議ふしぎいだが、心配しんぱいするな木彫きぼりだ、とはつしやる、……お前様めえさまつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八月十四日午前九時——もつと判り易く言へば昨日きのふ朝の事——阪神線の香櫨園かうろゑん停留場から電車に乗つた男があつた。車のなかは、玩具箱おもちやばこのやうな色々な人形でごつちやになつてゐた。
掻き取つた生漆きうるしを、町の市場に持つて行つて、そこで仲買人に売るのであつたが、フウトウの漆の市場は、あらゆる日常品がそろひ、この日は、玩具箱おもちやばこをひつくりかへしたやうなにぎやかな素朴さで
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)