独居ひとりい)” の例文
旧字:獨居
イヤ、視覚聴覚ばかりではない、脳細胞そのものが病気にかかっているのではないだろうか。こんな山の中の独居ひとりいがいけないのかも知れぬ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
気まかせに衣裳箪笥を片づけたり、読書したり、久しぶりの独居ひとりいの楽しさは、魅するようであった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
中頃は振残ふりのこされし喞言かこちごと、人にはきかがたきほどはずかしい文段もんだんまでも、筆とれば其人の耳につけて話しするような心地して我しらずおろかにも、独居ひとりいうらみを数うる夜半よわの鐘はつらからで
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
独居ひとりいのねぶり覚ますと松がにあまりて落つる雪の音かな
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は遂に春泥の小説の主人公を真似て、自から屋根裏の遊戯者となり、自宅の天井裏に忍んで静子夫人の独居ひとりいを隙見しようと企てたのであります。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
二年ばかり海外に旅をしたこと(帰朝きちょうしたのはつい一昨年いっさくねんの暮であったが、その二年の間、静子は毎日茶、花、音楽とうの師匠にかよって、独居ひとりいの淋しさをなぐさめていたのだと語った)
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)