狂喜きょうき)” の例文
普通の人が暗闇と思うところでも、ハッキリえる。——この異常な感覚を自覚したときのダリアの狂喜きょうきぶりは、大変なものだったろう。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
快風かいふう一陣! かれを狂喜きょうきせしめた便たよりは天の一かくからきた。クロの足にむすびつけられた伊那丸いなまる血書けっしょの文字、竹童ちくどうがもたらしてきた果心居士かしんこじの手紙。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私どもは馬に一むちくれて、威勢いせいよくつぎの餌肉えにくのところへいった。はたしてそこにもない。私は狂喜きょうきして
そのむかし狂喜きょうきした若者たちが、ひたいにバラの花を巻いて、美しいライスの姉妹しまいたちとおどったところです。いま、そこは死んだように静まりかえっていました。
佐助は我が眼前朦朧もうろうとして物の形の次第しだいに見え分かずなり行きし時、俄盲目にわかめくらあやしげなる足取りにて春琴の前に至り、狂喜きょうきしてさけんで曰く、師よ、佐助は失明いたしたり
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
オフィリャは可憐かれんであった。劇中劇の幕の終、ハムレットの狂喜きょうきことに好かった。諫言の場もハムレットの出来は好かった。矢張王妃おうひが強過ぎた。ポロニアスは手に入ったもの。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今年わたしは進士しんし試験しけんをとりまして、まちあぐんでいた女のもとに帰ってきました。女はぶじに帰ったわたしをみると狂喜きょうきいたしました。けれどわたしの心はあまりはずまないのでした。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
かれが血刀ちがたなを振って、狂喜きょうきのこえを空になげると、クロはしずかにおりてきて、小船のはしに、翼をやすめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一束ひとたばの鍵が、手にさわった。私は狂喜きょうきした。それこそ、あの人造人間の指揮塔の扉の鍵だったのである。私はニーナの手をとって、階段づたいに、人造人間のいる三階へ、かけのぼって行った。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
忍剣にんけんは、ほとんど児童わらべのように狂喜きょうきして、あおぐように手をふりながらおどりあがっている——と見るまに、それにもどってきた龍太郎は、どんと一同のなかへ梅雪ばいせつをほうりやって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、仰天ぎょうてんし、狂喜きょうきしたのは、かの特使であった。