狂人きやうじん)” の例文
こんな狂人きやうじんじみた女のおほ袈裟な言葉を釣り出し、それを根據にまたこちら自身の平生へいぜいを人が世間に廣告しては甚だ以つておほ迷惑だ。
何でも、自分の記憶の底に沈んで居る石塊いしころの一つの名も、たしか『高沼繁』で、そして此名が、たしか或る狂人きやうじんの名であつた様だ。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
はあ、病人びやうにんしかなんにん狂人きやうじん自由じいう其處邊そこらへんあるいてゐるではないですか、れは貴方々あなたがた無學むがくなるにつて、狂人きやうじんと、健康けんかうなるものとの區別くべつ出來できんのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
狂人きやうじんびかゝつて、猛然と彼の咽喉元を掴んで、彼の頬に噛みついた。彼等は爭つた。
わがもてるものはまづしとおもへども狂人きやうじんりてこの世はなむありのまにまに
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
げにげにあるものは大蒜にんにくはたけ狂人きやうじんの笑へるごとく
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
法官ほふくわんの前に狂人きやうじん立てりともいふべし
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
狂人きやうじんえ立てた。彼女はその振り亂した毛を顏から拂ひのけて、恐しい樣子をして訪問者達をにらみつけた。私はその紫色の顏、——むくんだ姿をよく覺えてゐた。プウル夫人が寄つて來た。
いま狂人きやうじんのひとむれは空うち仰ふぎ——
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)