物干棹ものほしざお)” の例文
足もとは暗いが、木の梢だけは、夜の空にかっきりと黒く張って、穂高の輪廓は、ボーッと、物干棹ものほしざおでも突き出したように太く見える。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
……おしめもふんどしも一所に掛けた、路地の物干棹ものほしざおひっぱずすと、途端みちばたの与五郎のすそねらって、青小僧、蹈出ふみだす足とく足の真中まんなかへスッと差した。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女はグッとめた。あたしが帰る時はもう、彼女は物干棹ものほしざおひさしの上の猫どもを追いはらっていた。
厚紙もて烏帽子えぼしを作りてこうむり、はたきを腰に挿したるもの、顱巻はちまきをしたるもの、十手を携えたるもの、物干棹ものほしざおになえるものなど、五三人左右に引着けて、かれは常に宮のきざはしの正面に身構えつ
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
北も南も吹荒ふきすさんで、戸障子をあおつ、柱をゆすぶる、屋根を鳴らす、物干棹ものほしざお刎飛はねとばす——荒磯あらいそや、奥山家、都会離れた国々では、もっとも熊を射た、鯨を突いた、たたりの吹雪に戸をして
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてその国麿はと想う、かれはいま東京に軍人にならむとて学問するとか。烏帽子えぼしかぶりて、はたきりしかの愛らしき児は、煎餅せんべいをば焼きつつありとぞ。物干棹ものほしざお持てりしは、県庁に給仕勤むるよし。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひさしから突出した物干棹ものほしざおに、薄汚れたもみきれが忘れてある。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)