まど)” の例文
家の壁は葡萄ぶどう、薔薇の蔓にまとわれ、半身像を以て飾られ、まどけたには瓶を並べ、纏絡てんらく植物それより生え出でる。舞台の右方はこの壁にて仕切られるなり。
姫は、山田の道場のまどから仰ぐ空の狭さを悲しんでいる間に、何時かここまで来て居たのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
私は書見に勞れて、机を離れて背延びをしながらまどつた。山々の上に流れ渡つて居る夜の匂ひは冷々と洋燈の傍を離れたあとの勞れた身心にせまつて來る。何とも言へず心地が快い。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
ふとまどより見おこせたるに、やゝ程とほくへだてて女人をみなひとり、着けたるきぬ白う花のひまに照り映ゆるさまなり。かゝる境にいかでとあやしけれど、趨り出でゝ見むとすれば、はやう遁れき。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ある宵われまどにあたりて横はる。ところは海のさと、秋高く天朗らかにして、よろづのかたち、よろづの物、凛乎りんことして我に迫る。あたかも我が真率ならざるを笑ふに似たり。恰も我が局促きよくそくたるを嘲るに似たり。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いづこのまどらねども
薄紗の帳 (旧字旧仮名) / ステファヌ・マラルメ(著)
さつきまどから見れば
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
女鳥めとりの わがおおきみのおろす機。ねろかも——、御存じ及びでおざりましょうのう。昔、こう、機殿のまどからのぞきこうで、問われたお方様がおざりましたっけ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
立出てまどをひらけばの方は
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
にはかにまどを洩れ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
荒々しい声と一しょに、立って、表戸と直角かねになった草壁の蔀戸しとみどをつきあげたのは、当麻語部たぎまのかたりおむなである。北側に当るらしい其外側は、まどを圧するばかり、篠竹しのだけが繁って居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)