つらつ)” の例文
猟師かりうどの家につかへ、をさをさ猟のわざにもけて、朝夕あけくれ山野を走り巡り、数多の禽獣とりけものを捕ふれども。つらつら思へば、これまことおおいなる不義なり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
私はつらつらそれを眺めている内に我が邦上古にその花を衣に摺ったという事を思い浮べたので、そこで早速にその花葩はなびらを摘み採り試みに白のハンケチに摺り付けて見た所
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
たまたま立止る者が有るかと思えば、つらつら視て、金持なら、うう、貧乏人だと云う、学者なら、うう、無学な奴だと云う、詩人なら、うう、俗物だと云う、そうして匇々さッさと行って了う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これが又禿の御意ぎよいに入つたところで、女めつらつ高利アイス塩梅あんばいを見てゐる内に、いつかこの商売が面白くなつて来て、この身代しんだい我物と考へて見ると、一人の親父よりは金銭かねの方が大事
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
つらつおもんみる迄もないが、一八二五年ブーラールが死んでから百年目(正確に云えば百一年目)に僕が此の雑文を書くようになったのも、——少々阿呆陀羅あほだら経めくが——やっぱり、一樹の蔭
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
そこでつらつら私の思うたには、従来我邦にまだ一の完全した日本の植物志すなわちフロラが無い。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
つらつかんがうるに、私はその山ヂサは樹ではなく草であって、それはイワタバコ科のイワタバコ(岩烟草)一名イワヂシャ(岩萵苣)一名タキヂシャ(崖萵苣)一名イワナ(岩菜)
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)