熊野権現くまのごんげん)” の例文
平氏の繁昌はんじょう振りをみて、これは、熊野権現くまのごんげんのご加護だと誰からとなくいい出した。ところが、この噂の出どころは、実は清盛なのである。
どんな合戦かっせんも、一まいの、熊野権現くまのごんげん誓紙せいしで、ほこおさめることができた。神をなかだちにしてちかえば、大坂城おおさかじょうほりさえうずめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
康頼 神をうたがってはいけません。熊野権現くまのごんげん霊験れいげんあらたかな神でございます。これまでかけたがんの一つとして成就じょうじゅしなかったのはありません。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それは都の大臣殿おおいどのから熊野権現くまのごんげんに奉ったもので、そのころ盗まれた神宝かんだからの一つであった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
清姫様をさとして言うことには、わしはこれから熊野権現くまのごんげんへ行く身だからけがれてはならぬ、その代り帰りには、きっとお前の望みをかなえて上げるから、日数ひかずを数えて待っていて下さいと
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
第一幕と同じさびしき浜辺はまべ熊野権現くまのごんげんの前。横手にまずしき森。その一端に荒き丸太まるたにてつくれる形ばかりの鳥居とりい見ゆ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
九鬼右馬允の乗っている大船には、熊野権現くまのごんげん大幟おおのぼりと日の丸がひるがえっていた。名づけて日本丸とよぶそれは、どう七間たて十数間という熊野船だった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう五本流せば、熊野権現くまのごんげん様にたてたちかいのとおり、千本という数になります。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)