烟草屋たばこや)” の例文
むかしともといふうちにもこれはわすられぬ由縁ゆかりのあるひと小川町をがはまち高坂かうさかとて小奇麗こぎれい烟草屋たばこや一人息子ひとりむすこいま此樣このやういろくろられぬをとこになつてはれども
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小包郵便を載せた赤い車がはっと電車とれ違うとき、又代助の頭の中に吸い込まれた。烟草屋たばこや暖簾のれんが赤かった。売出しの旗も赤かった。電柱が赤かった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時々さらいや何か致しますと、みんな此の男の弟子が手伝いに参りますが、ふと手伝いに来た男は、下谷したや大門町だいもんちょう烟草屋たばこやを致してる勘藏と云う人のおい、新吉と云うのでございますが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
坂の北側はけちな家が軒を並べていて、一番体裁のいのが、板塀をめぐらした、小さいしもた屋、そのほかは手職をする男なんぞの住いであった。店は荒物屋に烟草屋たばこや位しかなかった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
昔の友といふ中にもこれは忘られぬ由縁ゆかりのある人、小川町の高坂とて小奇麗な烟草屋たばこやの一人息子、今はこの様に色も黒く見られぬ男になつてはゐれども
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御案内の通り片側かたかわ籾倉もみぐらで片側町になって居りまして、竹細工屋、瀬戸物屋、烟草屋たばこやが軒を並べて居り、その頃田月堂という菓子屋があり、前町を出抜けて猿子橋にかゝりますると
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)