湿気しめりけ)” の例文
旧字:濕氣
冬の雪のこほらざるは湿気しめりけなくかわきたるすなのごとくなるゆゑなり。これ暖国だんこくの雪に異処ことなるところなり。しかれどもこほりてかたくなるは雪とけんとするのはじめなり。
唯、木蔭地こさぢ湿気しめりけにも似て、日の目も知らぬ淋しき半生に、不図天上の枝から落ちた一点の紅は其人である。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
よく琴平や屋島などで客を待つ「元黒もとぐろ」と呼ぶ大きな赤い団扇も、同じくここで出来るのであります。暑くて湿気しめりけの多い日本の夏は、団扇がないとこまります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ちょうど一時頃荷物を整えてだんだん西北の山の方に進んで参ったところが、昨日の疲れが酷いのと荷物はほぼ乾いて居るけれども一体に湿気しめりけを帯びて居るので非常に重い。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
先頃米国の或る会社で如何いかなる気候に逢っても決してしめらないというビスケットを売出して大層な好評を得ました。しかるに日本へ輸入したものはぐに湿気しめりけを受けて柔くなっています。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
自分は靴足袋くつたびの裏に湿気しめりけを感じて起き上ると、足の方に当る窓が塵除ちりよけしゃで張ってあった。自分はいそいで窓をて換えた。ほかの人のはどうかと思って、聞いて見たが、答がなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
湿気しめりけを持った夜風がしっとりと公園に立めていた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
冬の雪のこほらざるは湿気しめりけなくかわきたるすなのごとくなるゆゑなり。これ暖国だんこくの雪に異処ことなるところなり。しかれどもこほりてかたくなるは雪とけんとするのはじめなり。
もちろん皮の事でございますから湿気しめりけがひどくなりますと柔らかになって重くなる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そも/\うみはじむるよりおりをはるまでの手作てわざすべて雪中にあり、上ひんに用ふる処の毛よりもほそき糸を綴兆しゞめたり舒疾のべたりしてあつかふ事、雪中にこも天然てんねん湿気しめりけざればがたし。
湿気しめりけうしなへば糸をれる事あり。